ヘパリン類似物質とは
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乾燥による肌のトラブルで皮膚科を受診した際に処方されることが多い「ヘパリン類似物質」。今回はこのヘパリン類似物質についてご紹介します。
ヘパリンとヘパリン類似物質の違い
ヘパリン類似物質は人の体内で生成される「ヘパリン」に似た化学構造をもつため、ヘパリン“類似物質”と名付けられました。
- ヘパリン
- 「へパ」は「肝臓」という意味であることからもわかるように、ヘパリンは人の肝臓で生成される物質です。ヘパリンは血液を固まりにくくする「抗凝固作用」があり、医療の現場でも治療のために用いられます。
- ヘパリン類似物質
- ヘパリンに似た化学構造をもつヘパリン類似物質は、水に溶けやすい・水に混ざりやすいといった「親水性」があり、水分子を引き寄せて保持する「保水性」があるため、高い保湿力が期待できます。
ヘパリン類似物質の作用
ヘパリン類似物質には、保湿作用のほかにも血行促進作用、抗炎症作用があります。
- 保湿作用
- 親水性と保水性をもつヘパリン類似物質を皮膚に塗布することで、角層まで水分が行き渡り、高い保湿効果が期待できます。同じく保湿作用のある尿素と比較すると、ヘパリン類似物質のほうがより高い保湿効果をもたらすことがわかっています。
保湿剤主成分の作用比較
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角層柔軟化作用 バリア機能補強作用 水分保持作用 ヘパリン類似物質 尿素 - 抗炎症作用
- 皮膚の炎症を鎮静する効果が期待でき、乾燥による炎症がまねく肌荒れの治療にも用いられます。
- 血行促進作用
- 血液の流れを促進する効果が期待できます。また、皮膚の新陳代謝を促進するため、傷あとや火傷のあとを治療する際にも用いられます。
ヘパリン類似物質のタイプ別特徴
ヘパリン類似物質には、軟膏、クリーム、ローションといった使用感の異なる剤形があります。それぞれの特徴を参考に、患部に適したものを選びましょう。
- 軟膏
- 水に溶けにくく、皮膚の保湿・保護作用が高いという特徴があります。ほかのタイプと比べて刺激が弱いので、肌の弱い人にも使えるうえ、湿った患部から乾燥した患部まで、様々な状態の患部に使用できます。べたつきが強いため、有毛部や夏季などの汗をかきやすい時期の使用には適していません。
- クリーム
- 伸びがよく、べたつきが少なく、水で洗い流しやすいといった特徴があります。ジュクジュクしている患部、傷がある部分には適しませんが、乾燥した患部に使用する際や、軟膏のべたつきを避けたい場合に適しています。
- ローション
- 液体に薬を混ぜたもので、塗ったあとに水分が蒸発して表皮に残る薬剤の効果が期待されます。若干の刺激性があるため、湿ってジュクジュクしている患部には適していませんが、軟膏やクリームが塗りにくい有毛部などへの使用に適しています。